
第3回(2024年度)
すべてを賭けて退職・大学院進学を選んだ看護師の覚悟。日本に40名の希少な専門職を目指した理由。 すべてを賭けて退職・大学院進学を選んだ看護師の覚悟。
日本に40名の希少な専門職を目指した理由。
横浜市立大学大学院卒業
(修士2年生時に首藤奨学財団の奨学金を受給)
福士佳奈さん
Alumni Interview 02
01:看護の道をめざしたきっかけと、社会人経験を経て大学院に進学した理由を教えてください。
「看護の現場で見つけた“現場の課題”と“自身の長所”。さらなる専門性を求め大学院へ」

最初から「看護師になりたい」と思っていたわけではなく、母親からの勧めもあり、医学部進学なども視野に考えていました。進路選択の際に、患者様にとって最も身近な存在である看護の世界に魅力を感じ、この道を選択しました。
実際に働き始めてみると、多職種との連携が不可欠な現場で、それぞれの職種がパフォーマンスを最大限に発揮できるように調整する役割が、自分の性格に適していると気が付きました。今ではこの仕事に強い誇りと充実感を覚えています。
学部生時代から「いつかは大学院へ」という考えは持っていました。大学卒業後、看護の現場で経験を積んだのですが、「見えてきた現場の課題への解決策を考えたい、自分の可能性を広げたい」と考え、進学を決意しました。
大学院進学にあたって、退職という大きな決断をしたこともあり、「より貪欲に知識を吸収しよう」という強い姿勢で臨んでいました。
02:不退転の覚悟をもって進んだ大学院での生活、実習や研究はどうでしたか?
「経済的な焦燥感や疎外感からの悩み。研究に没頭させてくれたのは奨学金」

精神的にも経済的にも、想像以上に大変な日々でした。周囲の院生の多くは、職場に籍を置いたまま「休職扱い」で進学していました。対して私は「退職」して進学していたため、常に経済的な不安がありました。「自分は今、社会的な役割を何も果たせていないのではないか」という焦燥感や疎外感に悩まされることもありました。
JASSOの奨学金や家族の支援もありましたが、学会参加費や医学書の費用などを賄うため、平日休日問わず、アルバイトを入れざるを得ませんでした。実習や研究のデータの収集のために夜遅くまで病院に残ることも多く、心身ともに余裕はありませんでした。
そんな中、首藤奨学財団から奨学金を受給できたことは、私にとって大きなターニングポイントになりました。
経済的なゆとりができたことで、平日は、研究や実習に完全集中できる環境が整ったのです。あの一年間があったからこそ、患者様の周術期の一連の経過を術前・術中・術後と一貫して見届け、「術後の不快感」に関する研究をまとめ、納得のいく成果を出すことができました。
03:「周麻酔期看護師」という職種について、大学院で学んだことによる気づきを教えてください。
「全国でもまだ数が少ない「周麻酔期看護師」。自分の限界を知り、常に学び続ける姿勢」

大学院を修了した現在は、東京女子医科大学病院に勤務しています。所属は看護部ですが、実際の現場では麻酔科医の指示の下、周麻酔期を通して高度な看護実践を行なっています。
「周麻酔期看護師」は手術を受ける患者様の全身麻酔に関わるほか、術前の全身状態の評価、術後の痛みの管理など、周麻酔期の患者様に継続的に関わっています。
大学院で学んだことで、医学的視点や知識の深さが以前と大きく変わりました。以前は患者様が苦しんでいても、声掛けや精神的なケアなど、できることが限られていました。しかし今は、なぜ痛むのかという原因をアセスメント(分析)し、麻酔科医と協力しながら、より踏み込んだ介入が可能になりました。
ただ、大学院を修了したからといって、なんでもできる存在になったわけではありません。むしろ、「自分の足りない部分や、まだできないこと」を客観的に認識できたことが、大学院での最大の収穫だと思っています。自らの限界を知っているからこそ、常に学び続ける姿勢を崩さずにいられる。それが最終的に患者様の利益につながると信じています。
04:将来の展望と、医療の道を目指す後輩へのメッセージをお願いします。
「先駆者の一人としてこの専門職を確立させたい。悩んだら、周りをうまく巻き込んで前に進んでほしい」

日本において「周麻酔期看護師」として活動している人は、まだ非常に少ない現状です。すでにこの道を歩まれている先輩方や仲間たちと協力し、周麻酔期看護学という分野を発展させていきたいという強い想いがあります。周麻酔期看護師について広く知ってもらい、周麻酔期看護師が働きやすくなるための環境整備や教育活動にも貢献していきたいです。
振り返ると「もっと周囲の人を上手に巻き込んで、自分だけで悩まずに、研究を進めてもよかったかな」とも思います。皆さんも、気を使いすぎずに先人に相談してみてください。
首藤奨学財団の皆様には、大変な時期を支えていただきました。私がいただいた恩を、次の世代への支援という形で繋いでいく協力ができれば嬉しく思います。
今後のご活躍を期待します。財団との繋がりも大切にしていきましょう
一度キャリアをストップして「学びを極める」という選択をした人ならではの、強い覚悟が伝わってきました。今後のさらなるご活躍を応援しております。
首藤奨学財団は今後、財団役員、奨学生や卒業生の繋がり創出につながる仕組みを創出したいと考えております。
財団でイベント等を開催する際にはお声がけします。
今後もこの繋がりを大切にしていきましょうね。
※本記事は、事務局によるインタビューを基に構成しています。掲載にあたっては、事前にご本人による内容確認の機会を設けて公開しております。

